バスケをあきらめたくかった。だから今、ここにいる

コーチKさんの経験談を聞く

Q:Kさんがスペシャルオリンピックスに出会ったきっかけを教えてください。

Kさん:私は、小学校から高校までバスケットボールに打ち込んでいましたが、大学ではケガが原因で選手としてバスケをすることができなくなってしまいました。それでも何かしらバスケに関わっていたいという思いがあり、「バスケットボール」「ボランティア」のキーワードでネット検索をしてみたんです。そこでヒットしたうちの一つがスペシャルオリンピックスでした。正直なところこの時点では、特にスペシャルオリンピックスでなければならないという思いはありませんでした。

Q:ネットで検索して参加してみるというのは勇気が必要だと思いますが?

Kさん:そうですね。さらに、私は障害のある人たちとかかわることがなかったので、緊張や不安があったのですが、バスケをしたい、バスケをして何か社会に貢献したいという思いが結構あって、最初の壁を乗り越えました。もちろん緊張は高かったのですが、バスケという共通の楽しみを通じて、パスをつなぎ、シュートを放ち、知的障害のあるアスリートと打ち解けることができたんです。このような関係性をつくれたことは私にとって、貴重な自信となり、また視野が広がったと思います。なんと、この経験は他の友だちにはない経験なので、就活にもプラスになりました。

Q:そうでしたか。それは良かったですね。

Kさん:また、私はそれまで勝敗にこだわるスポーツしか知らなったのですが、スポーツには、それだけではない価値観があること、バスケが好きな人たちと成長を分かち合える喜びも学びました。コロナ禍で、みんな自宅を中心とした自粛生活を余儀なくされた時も、ヘッドコーチの方のはからいで、オンラインでつながり続けることができました。その後、私はコーチとしてナショナルゲーム(全国大会)にも参加することができました。

Q:それはなかなかできる経験ではないですよね。

Kさん:そうですね。知的障害のあるアスリートと目標を共有し、バスケのスキル向上のコーチングをします。それだけではなくて、体育館を離れたインフォーマルな機会でも、食事に行ったり、楽しみや余暇なんかも共有することができました。そうしているうちに、私にとってアスリートやその家族が仲間、友人になっていった感じです。

Q:プログラムでバスケのコーチをして、それで終わりということでは無いようですね。

Kさん:そうですね。私はボランティアとして、アスリートへのコーチングをしつつ、アスリートからも学んでいます。お互いに学び合える関係性があります。誰もが生きていく上で、例えば仕事上で、何らかの困難に出会うことがありますよね。そんな時に思い起こすのが、バスケに真剣に向き合い、技術向上のために、チームのために、ひたむきに努力するアスリートの姿なんです。私にとっては、アスリートは仲間であり、そんなアスリートたちが頑張る姿は、私の仕事のエネルギーになっていますね。 私は自分の好きなことを通じて、スペシャルオリンピックスと出会い、自分の可能性も広がったと思います。スペシャルオリンピックスでのそんな経験を一人でも多くの人と分かち合えればうれしいです。